■
妹
昨夜の勤務中、突然携帯が鳴り響いた。聞き覚えのあるLINEの着信音。
ポケットから携帯を取り出し画面を確認すると、妹Aからだった。
なんだろうと気になったが、ちょうど従業員の対応をしていたためしばらく放置して様子をみる事に。...だが20秒程経っても着信は止まない。
なんだなんだ緊急事態か?お金でも無くなったのか?
従業員も「でなくていいんですか?」と言わんばかりの視線を向けるようになってきたので仕方なく業務を中断する事に。
「すみません〇〇さん(同僚K)、対応変わってもらえますか。」
「いいですよ。」
室内の端の方へ移動し応答ボタンをタップする。
「もしもし」
私がそう言うと、すぐに陽気な声が返ってきた。
「もしも〜し、やっほ〜。」
あ、これ出なくても大丈夫だったやつだ。
「おう。どうした。」
「ふふふ、彼氏ができました〜!」
....。
なんだそんな事か。緊急事態じゃなくて良かった。相手はどんな人なんだろう。少し寂しいな。でもちょっと嬉しいな。いやいやすぐ仕事に戻らないと。
色んな気持ちが一瞬で頭を埋め尽くした。
「あ、おめでとうございます」
とりあえず祝福の言葉をかける。
「前から話してた年上の人〜」
あー、確か正月帰省した時に惚気話を聞かされたっけ。あの人か。
「おー、おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます。」
なんなんだこのコミュ障な会話は。
「とりあえずお仕事中なのでまた時間のある時に。」
「あ、はい。すいません。」
ツー...ツー...。
最後にフフッと笑い声が聞こえた気がした。
相当嬉しかったのだろう。昔から、特に嬉しい事があると分かりやすい妹だった。
その後一言「おめでとさん」とLINEを入れておいた。
すぐに幸せそうな女の子のスタンプが返ってきた。
妹が幸せそうなのは兄としても嬉しい。
そう思うと同時に、私の彼女いない歴は本日も更新されていくのであった。